折々の記 57

神式の葬儀

   日本では葬儀の多くが仏式で行われ、神式の葬儀も残っています。我が家は神道なので先日、神式で葬儀を行いました。祭壇(さいだん)の両側には緑色の幟(のぼり)があり、三種の神器である刀と鏡、勾玉(まがたま)を包んだ布が掛けられ先端には榊(サカキ)の束がついています。幟は日と月にわかれ、錦(にしき)の御旗(みはた)はこんな旗だったかもしれないと妄想してしまいます。                                                                  神式の祭壇モデル
   祭壇は三段の白木の棚からなり上段には大きな鏡、中段は花で飾られ、下段には水を入れた器、皿に盛ったコメや塩、お酒の入った瓶子、三方にのせた海産物や野菜などがところ狭しと並びます。これらは故人が神になるにあたって最後の晩餐(ばんさん)に使われるらしい。

   会場に雅楽(ががく)がながれると、烏帽子(えぼし)をかぶり 笏(しゃく)をもった神官殿が狩衣姿(かりぎぬすがた)で登場します。足元はポックリに似た下駄のような履物です。後ろに下がる時に脱げて困っていましたが昔のお公家さんは外出時にこれを履いていたそうです。

   はじめに神官が大きな榊(さかき)、これをおおぬさ(大麻)というそうですが、右左右と振って式場や参列者、祭壇の品々のけがれを祓(はら)うと、『かけまくも畏き(かしこき)イザナミノオオカミ …祓い(はらい)給え 清め給え』と祓詞(はらいことば)を朗々とのべます。聞き覚えのある古事記にある文言です。
   そして霊璽(れいじ)、これは仏教の位牌(いはい)にあたるものですが、四角い小さな白木の箱を棺桶にたたきつけてオーーーという声とともに故人の魂を移し入れます。霊魂がもし棺桶にいなかったらどうするのでしょうか。心配してしまいます。
   それが終わると生前の遺徳をしのぶ祝詞(のりと)がのべられ、新しい名前をつけてもらいます。女性の場合は刀自命(とじのみこと)という敬称をつけるだけ。戒名(かいみょう)のようにお金はかかりません。

   ついで参列者が神官から玉ぐしをもらって祭壇にささげ、一礼・二拍・一礼します。この時の拍子は音をたてずに行うよう注意が入ります。概ね、これで葬儀はおわりです。

   仏教では魂を極楽浄土へ送り出すのに対して神道ではすぐに守護神となって家を守ってもらいます。しかし、神道では死んでからもすぐに働かねばならないので大変です。