折々の記 53

石とエアロビクス-2手術


   エアロビクスのおかげで尿管から結石残渣を除くことには成功しましたが、今度は膀胱から出ないのでとうとう手術の日を迎えてしまいました。
   2年間で4度目の手術ともなると看護師たちのやさしい声掛けも減ってしまいます。『わかっていますね!』といわれて何もかも自分でしなければなりません。手術前日に手続きをすませて病室にはいると麻酔科へいって説明を受けあとは下剤を飲んで病室で神妙にしています。
   翌日は時間になると手術服に着替えて手術室に行きスタッフにご挨拶。手術台に上がって名前や生年月日、手術の内容を申告します。この手術台の狭いこと。そして心電図や血圧、酸素濃度などの測定装置につなげられると麻酔の注射です。

   手術が始まるころには胸から下は麻痺しているので何をされてもわかりません。ぼんやりと横になっていると医師が耳元で『石は全部回収しました。でもガンが見つかりましたが取りますか?』と聞いてきます。『せっかくですから取っておいてください』と答えるとしばらくして『終わりました!』  病室から病棟の看護師がベットを運び入れると医師と看護師たちが『せーの』で70`の体を手術台からベットへ移します。ここまでは患者のできる役割はほとんどありません。患者に努力が求められるのはここからです。

   点滴や尿道パイプ、両足の圧迫装置などをつけられて、定期的に血圧や体温、酸素濃度の測定があります。この状態で過ごすにはかなりの忍耐が必要です。それでも翌日から徐々にはずされ二日後には自由の身です。そして検査に合格すれば医師が退院を宣告します。病院食に終わりを告げたければ手術後はつとめて元気にふるまわなければなりません。やせ我慢が必要です。

   ところで、入院中はいつもながら夜中のナースコールが多いことに驚きます。寂しいので話がしたいだけの患者もいるし、飲み物が欲しいという患者、トイレの付き添いを頼む患者など要望はさまざまです。
   若い看護師が当直のときほどコールの頻度は多く、おばさん看護師の時はあまり鳴りません。夕方に当直の挨拶に来る看護師をみれば、その夜が静かかどうか分かるのです。
   患者は病気に向き合って孤独に耐えているだけに、やさしさに飢えているのです。付添いでもいれば落ち着くのでしょうが、今はコロナで見舞いや付き添いは禁止されています。
   たぶん今夜もナースコールは鳴っているでしょう。幸い、やせ我慢のおかげで退院できて静かな夜を過ごしています。