蚕と絹のあれこれ 11

桑の登録農薬と蚕への安全性


  蚕は桑しか食べませんが、桑の葉を食べる虫はクワノメイガやクワエダシャク、モンシロドクガなど色々といます。これらの虫が増えてしまうと桑の葉が食い荒らされるので農薬で駆除しますが、蚕はことのほか農薬に弱いので注意が必要です。桑は農薬を散布してからある程度の日数を置いて収穫する必要があります。 その日数は農薬によって違うので、安全基準日数とよんで農薬ごとに定めています。農薬が分解されて蚕が食べても中毒を起こさないための日数です。
  これは野菜や果樹、米麦などに散布した農薬が風にのって飛んできて桑に付くことがあり、そうした殺虫剤や殺菌剤についても調べています。  もし、その可能性があれば安全基準日数まで使うべきではありません。やむなく使うのであれば、その桑の収穫はできるだけ後回しにして収穫した桑の葉は水で洗ってから使います。
  蚕が農薬中毒にあうと殺虫剤であれば体をねじって苦悶し胃液を吐いて死に至ります。殺菌剤であれば身体が弛緩して動かずに死んでしまいます。どんなに症状が軽くても、繭を作ることはありません。
  家で蚕を飼う場合には、たとえ離れた部屋であっても蚊取り線香や噴霧式の殺虫剤を使うと中毒を起こすことが多いので注意が必要です。養蚕が作業に便利な平地から山の上へ移ったのは、水稲や野菜への農薬が飛散して蚕への被害が多発したためです。何万頭もの蚕が朝起きてみると全滅していたことも少なくありません。蚕を飼う上で農薬の使用には注意が必要なのです。
  下記の安全基準日数は群馬県病害虫防除指針や旧長野県蚕業センターなどの資料を参考にしています。
殺虫剤
    薬剤名   倍率
 
     適用する害虫  参考 安全基準
日数
 アプロード水和剤    1,000 ハゴロモ類幼虫、ヒシモンヨコバイ幼
 200g/10a    7日
  エルサン乳剤   1000 クワノメイガ、ハゴロモ類、カイガラム
 120g/10a   17日
 エルサン粉剤2    
ヒシモンヨコバエ、クワヒメゾウムシ    3キロ/10a    17日
 ガットキラー乳剤     50 カミキリムシ類、ヒメゾウムシ成虫 春発芽前,夏切後    40日
 トラサイドA乳剤   100 カミキリムシ類 100〜300g/
10a
 40日
 以上
  バークサイドオイル     原 カミキリムシ類、クワヒメゾウムシ    冬季       
 パインサイドS油剤C      原 カミキリムシ類、クワヒメゾウムシ    冬季       
  マシン油乳剤95    12 カイガラムシ類    冬季  95日
  ディブテレックス乳剤   1000 クワノメイガ、アメリカシロヒトリ
ハゴロモ類、ヒシモンヨコバイ

 16〜
 20日


殺菌剤
    薬剤名   倍率       適用する病気        参考 安全基準日
  アグリマイシン100     500 縮葉性細菌病 200〜700g/10a       2日
  トップジンM水和剤  1,500 裏うどんこ病、汚葉病、輪斑病 100〜300g/10a        5日
  ベンレート水和剤   1,000
  2,000
胴枯病
輪斑病
100〜300g/10a        9日
  モレスタン水和剤  2,000 裏うどんこ病、ハダニ類 200〜700g/
10a
1 5
 日
  ヨネポン   500 縮葉性細菌病、枝軟腐病   200g/10a    
3日


除草剤
    薬 剤 名   倍率       適     用        参考 安全
基準
日数
  トレファノサイド乳剤 250〜300 1年生雑草のうちイネ科に高い効果
(キク科、アブラナ科、ツユクサ科、カ
ヤツ リグサ科を除く)
雑草の発生前か
中耕除草後に
100g/10a
     
0日


農作物の防除薬剤が桑園に飛散した場合の安全基準日数
      殺虫剤   倍 率 安全基準日数      殺菌剤  倍 率




  アドマイヤ―水和剤  2,000   50日〜   エムダイファー水和剤    500  
17
  アブロード水和剤  2,000    7日   オーソサイド水和剤    400  
5
  アディオン水和剤  2,000    83日〜   カスミン粉剤     ー  3
  アグロスリン水和剤  1,000    90日〜   カスラブサイド粉剤     ー  6
 アブロードバッサ粉剤DL     ー     3日   キタジンP粉剤     ー  7
 EPN乳剤  1,000   15日    キノンド―水和剤    600
14
  オルトラン水和剤  1,500   25日    ゲッター水和剤  
1500

10
  カスケード乳剤  2,000   50日〜   サプロール乳剤  
1000
 
3
  コテツフロアブル  2,000   50日    ジマンダイセン水和剤    400
20
  サイアノックス水和剤  1,000      9日   スミレックス水和剤  
1000
7
  スピノエースフロアブル  2,000   60日〜   石灰硫黄合剤      
80

15
  スプラサイドM      50   30日〜   ダコニール1000  
1000
9
  スミチオン水和剤  1,000   24日    ダコニール粉剤     ー  8
  ダイアジノン乳剤40  1,000   16日     ドイツボルドーA    500 40

  ダントツ水和剤  2,000   60日〜    トップジンM  
1000
5
  トアロー水和剤CT  1,000   35日     ヒノザン乳剤30  
1000
9
 トクチオン乳剤  1,000   13日     ビスダイセン水和剤  
1500
7
 トレボン乳剤  1,000    90日〜    フジワン乳剤  
1000
3
 ハクサップ水和剤  1,000    80日〜    ベンレート水和剤    700 9
 パダン粉剤     ー    80日〜    ポリオキシンAL水和剤  
1500
5
   バッサ粉剤  1,000       9日    モンカットフロアブル 2000   
21
  べジホン乳剤  1,000   80日〜    リドミルMZ水和剤 1000
11
   マラソン乳剤  1,000   10日    ロブラール水和剤  
1000
7
   モスピラン水和剤  4,000   60日〜    ハチハチ乳剤 1000  
60

   ランネート45水和剤  2,000   14日    オリゼメート粒剤     ー  3

これらの安全基準日数は、あくまでも目安になる日数であり、条件によってはこれ以上の日数をあける必要があります。