桑の登録農薬と蚕への安全性
蚕は桑しか食べませんが、桑の葉を食べる虫はクワノメイガやクワエダシャク、モンシロドクガなど色々といます。これらの虫が増えてしまうと桑の葉が食い荒らされるので農薬で駆除しますが、蚕はことのほか農薬に弱いので注意が必要です。桑は農薬を散布してからある程度の日数を置いて収穫する必要があります。 その日数は農薬によって違うので、安全基準日数とよんで農薬ごとに定めています。農薬が分解されて蚕が食べても中毒を起こさないための日数です。
これは野菜や果樹、米麦などに散布した農薬が風にのって飛んできて桑に付くことがあり、そうした殺虫剤や殺菌剤についても調べています。 もし、その可能性があれば安全基準日数まで使うべきではありません。やむなく使うのであれば、その桑の収穫はできるだけ後回しにして収穫した桑の葉は水で洗ってから使います。
蚕が農薬中毒にあうと殺虫剤であれば体をねじって苦悶し胃液を吐いて死に至ります。殺菌剤であれば身体が弛緩して動かずに死んでしまいます。どんなに症状が軽くても、繭を作ることはありません。
家で蚕を飼う場合には、たとえ離れた部屋であっても蚊取り線香や噴霧式の殺虫剤を使うと中毒を起こすことが多いので注意が必要です。養蚕が作業に便利な平地から山の上へ移ったのは、水稲や野菜への農薬が飛散して蚕への被害が多発したためです。何万頭もの蚕が朝起きてみると全滅していたことも少なくありません。蚕を飼う上で農薬の使用には注意が必要なのです。
下記の安全基準日数は群馬県病害虫防除指針や旧長野県蚕業センターなどの資料を参考にしています。
殺虫剤
薬剤名 | 倍率 |
適用する害虫 | 参考 | 安全基準 日数 |
アプロード水和剤 | 1,000 | ハゴロモ類幼虫、ヒシモンヨコバイ幼 虫 |
200g/10a | 7日 |
エルサン乳剤 | 1000 | クワノメイガ、ハゴロモ類、カイガラム シ |
120g/10a | 17日 |
エルサン粉剤2 | ー |
ヒシモンヨコバエ、クワヒメゾウムシ | 3キロ/10a | 17日 |
ガットキラー乳剤 | 50 | カミキリムシ類、ヒメゾウムシ成虫 | 春発芽前,夏切後 | 40日 |
トラサイドA乳剤 | 100 | カミキリムシ類 | 100〜300g/ 10a |
40日 以上 |
バークサイドオイル | 原 | カミキリムシ類、クワヒメゾウムシ | 冬季 | − |
パインサイドS油剤C | 原 | カミキリムシ類、クワヒメゾウムシ | 冬季 | − |
マシン油乳剤95 | 12 | カイガラムシ類 | 冬季 | 95日 |
ディブテレックス乳剤 | 1000 | クワノメイガ、アメリカシロヒトリ ハゴロモ類、ヒシモンヨコバイ |
16〜 20日 |
殺菌剤
薬剤名 | 倍率 | 適用する病気 | 参考 | 安全基準日 数 |
アグリマイシン100 | 500 | 縮葉性細菌病 | 200〜700g/10a | 2日 |
トップジンM水和剤 | 1,500 | 裏うどんこ病、汚葉病、輪斑病 | 100〜300g/10a | 5日 |
ベンレート水和剤 | 1,000 2,000 |
胴枯病 輪斑病 |
100〜300g/10a | 9日 |
モレスタン水和剤 | 2,000 | 裏うどんこ病、ハダニ類 | 200〜700g/ 10a |
1 5 日 |
ヨネポン | 500 | 縮葉性細菌病、枝軟腐病 | 200g/10a | 3日 |
除草剤
薬 剤 名 | 倍率 | 適 用 | 参考 | 安全 基準 日数 |
トレファノサイド乳剤 | 250〜300 | 1年生雑草のうちイネ科に高い効果 (キク科、アブラナ科、ツユクサ科、カ ヤツ リグサ科を除く) |
雑草の発生前か 中耕除草後に 100g/10a |
0日 |
農作物の防除薬剤が桑園に飛散した場合の安全基準日数
殺虫剤 | 倍 率 | 安全基準日数 | 殺菌剤 | 倍 率 | 安 全 基 準 日 数 |
アドマイヤ―水和剤 | 2,000 | 50日〜 | エムダイファー水和剤 | 500 | 17 日 |
アブロード水和剤 | 2,000 | 7日 | オーソサイド水和剤 | 400 | 5 日 |
アディオン水和剤 | 2,000 | 83日〜 | カスミン粉剤 | ー | 3 日 |
アグロスリン水和剤 | 1,000 | 90日〜 | カスラブサイド粉剤 | ー | 6 日 |
アブロードバッサ粉剤DL | ー | 3日 | キタジンP粉剤 | ー | 7 日 |
EPN乳剤 | 1,000 | 15日 | キノンド―水和剤 | 600 | 14 日 |
オルトラン水和剤 | 1,500 | 25日 | ゲッター水和剤 | 1500 |
10 日 |
カスケード乳剤 | 2,000 | 50日〜 | サプロール乳剤 | 1000 |
3 日 |
コテツフロアブル | 2,000 | 50日 | ジマンダイセン水和剤 | 400 | 20 日 |
サイアノックス水和剤 | 1,000 | 9日 | スミレックス水和剤 | 1000 |
7 日 |
スピノエースフロアブル | 2,000 | 60日〜 | 石灰硫黄合剤 | 80 |
15 日 |
スプラサイドM | 50 | 30日〜 | ダコニール1000 | 1000 |
9 日 |
スミチオン水和剤 | 1,000 | 24日 | ダコニール粉剤 | ー | 8 日 |
ダイアジノン乳剤40 | 1,000 | 16日 | ドイツボルドーA | 500 | 40 日 〜 |
ダントツ水和剤 | 2,000 | 60日〜 | トップジンM | 1000 |
5 日 |
トアロー水和剤CT | 1,000 | 35日 | ヒノザン乳剤30 | 1000 |
9 日 |
トクチオン乳剤 | 1,000 | 13日 | ビスダイセン水和剤 | 1500 |
7 日 |
トレボン乳剤 | 1,000 | 90日〜 | フジワン乳剤 | 1000 |
3 日 |
ハクサップ水和剤 | 1,000 | 80日〜 | ベンレート水和剤 | 700 | 9 日 |
パダン粉剤 | ー | 80日〜 | ポリオキシンAL水和剤 | 1500 |
5 日 |
バッサ粉剤 | 1,000 | 9日 | モンカットフロアブル | 2000 | 21 日 |
べジホン乳剤 | 1,000 | 80日〜 | リドミルMZ水和剤 | 1000 | 11 日 |
マラソン乳剤 | 1,000 | 10日 | ロブラール水和剤 | 1000 |
7 日 |
モスピラン水和剤 | 4,000 | 60日〜 | ハチハチ乳剤 | 1000 | 60 日 〜 |
ランネート45水和剤 | 2,000 | 14日 | オリゼメート粒剤 | ー | 3 日 |
これらの安全基準日数は、あくまでも目安になる日数であり、条件によってはこれ以上の日数をあける必要があります。