蚕のからだはどうなっているのか
繭から出て来た蚕の成虫 蚕蛾 触覚が見事です
蚕の成虫はカイコガ(蚕蛾)と言われる蛾の一種です。足は 3 対あって翅(はね)は 4枚、体は頭部と胸部に腹部の 3 つからなり蝶と同じ鱗翅目(りんしもく)の昆虫です。蚕は英語でsilkworm(シルクウォーム)といい、学名はBombyx mori(ボンピックスモリ)です。
鱗翅目は成虫の翅(はね)に鱗粉という粉状のものがついています。蝶や蛾の羽根をつかむと指に粉状のものが残るでしょう。これは雨水をはじいたり熱を遮断したりして蝶や蛾の体を守っています。
桑の葉を食べる蚕の幼虫 5令期
卵から孵化したての蚕の幼虫は、蟻(あり)のように小さく黒い毛で覆われています。その見た目から蟻蚕(ぎさん)とか毛蚕(けご)と呼ばれます。これが成長するにつれて毛は目立たなくなり、肌はつるつるとしてとても軟らかくなります。その皮膚の軟らかさではとても野外では生きていけないだろうと思います。
卵から孵ったばかりの蚕の幼虫
幼虫には足が 8 対もあります。歩くときには腹部や尾部にある 5 対を使い、胸部の 3 対は桑を食べるために葉をつかみます。 足の裏にはかぎ状の小さな爪があって滑り止めになっているため枝からぶら下がったり逆さになって移動したりできるのです。
幼虫はあまり動かず、桑があればよそへ行くことはありません。ただ、成熟して体があめ色に変化するようになると繭をつくる場所をさがして活発に歩きまわります。
人工飼料で飼育中の5令幼虫
幼虫に目はありますが明るさを感じる程度で物を見分けるほどの視力はなさそうです。鼻にかわる器官として口のそばに匂いを感じるセンサーがついていて桑葉の匂いを敏感に感知します。耳としての機能は無いように思います。蚕が桑を食べるとシャワシャワと雨が降るような音がしますが、空腹の蚕にこれを聞かせても何の反応も示しません。
蚕の幼虫は性格が温厚で、人に危害は及ぼしません。蚕は人の手があってこそ生きていけるので、これほど人に従順な昆虫はほかにいないのです。