今月のフォト 11 月 
折々の記 102 土入れから始まりました 
折々の記 103 森羅万象に神宿る

折々の記 104 病室からのつぶやき
後期高齢者に近づいたせいか、長期に入院することが増えました。
夏の終わりころ風邪から肺炎になり、そこから心不全になって一と月ほど入院し、ようやく退院したと思ったらつづいて骨髄炎による胸の痛みで再入院です。
たしか昨年の暮れにも腎盂ガンの手術をしたあと腎盂腎炎になって一と月ほど入院しています。
いずれもあまり馴染みのない病気だけに、なぜ罹ったのかがいまだにわかりません。
現在は抗生物質を点滴しながら、体内で繁殖している細菌をやっつけるために病室にいます。
二十日ほどで菌の多くは消えましたが、いまは臓器中に隠れている菌たちを掃討中です。
医師は一月下旬までは治療が必要と言っているので、入院が年を超えるのは確実です。
こんな老人が手厚い医療のお世話に浴するのは社会保障制度のうえで心苦しいかぎりですが、体の調子が悪くなると何とかしてほしいと思うのも人情です。
ある意味、この世に未練があるのかもしれません。
さて少し入院生活を紹介すると、病室は8畳ほどの洋風個室でトイレや洗面台、ソファー、テレビ、冷蔵庫があり、ある程度のプライバシーも守られて落ち着いて過ごせます。
味の薄さをがまんすれば三度の食事はきちんと出るし、部屋の掃除やトイレの掃除の人たちも毎日やってきます。それに看護師さんも終日いて、つねにバイタルをチェックしてくれるなど恵まれた境遇です。
そんな恵まれた中でも困るのは、私が人一倍匂いに敏感なこと。敏感といえば鼻がよく利くように思えますがそうではありません。
じつは自分の匂いがないと落ち着いて眠れないのです。
かつて浪人生のころ泊まりがけで大学受験に行く時に枕だけを持って出かけたので、宿の人たちが大いに呆れた事がありました。つまり、それだけ私の匂いの歴史は古いのです。
いまは年をとって少しは感度が鈍りましたが、病院へ使い古した枕を持参するわけにもいかず、愛用のバスタオルを何枚か丸めて枕のかわりにしています。
そのほか入院が長くなると外部との接触が少ないこともあって、今日が何曜日かもわからなくなり、認知機能や体力が急速に落ちていきます。
身体の機能回復は理学療法士が支援してくれますが、精神面のケアは誰もしてくれません。
看護師をつかまえては長々と話す人や病室やラウンジでポツンと座りつづけるお年寄りを多く見ます。
私も前回の入院では、家に帰ってもボーとしてしばらく日常生活に戻れなかったので、今回の入院では病床ノートをつけるようにしました。
今日が何月何日で何曜日なのか、医師や看護師らの名前や特徴、部屋にやってくる時間、自覚症状などを克明に記録していきます。
おかげで、思考が停止せずに頭が働くようになりました。それに妻など家族の面会は心の支えに加えて、現実社会に引き戻してくれる大きな役割があります。
一方、残念に思うのは年金生活に移行する際に民間の医療保険を見直してしまったこと。それ以前は掛け金が高くて保障内容も良かったガン保険や医療保険だったのですが、安くして補償の小さいものに切り替えてしまいました。
それまで元気で過ごせただけに保険類は見直しの最優先。まさかその頃から、健康寿命が下り坂になって病院とのお付き合いが始まるとは思ってもみませんでした。
たしかに医療費自体は、高額療養費制度のおかけで月額5万8千円ほどが上限ですが、入院したときの差額ベッド代や食費は自腹なので結構な負担になります。
地方都市とはいえ個室を頼めば日額1万円はするうえ食費は一日1500円です。ひと月入院すれば35万円ほどの持ち出しになり、医療費とあわせるとおよそ40万円です。
それに入院が一度で終わる保障もありません。よほどの民間の医療保険でないとカバーしきれないのが現実です。
見直されるのであれば、慎重にされた方が良いと思います。
