立ち止まってみてごらん   

 

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        折々の記    92       人類の繁栄    
                 折々の記    93         春告鳥              
                 折々の記    94       お米の値段高騰に思うこと  


               折々の記   95   みかん大丈夫か?

 昨年の秋のことでした。
  10月初旬から極早生の温州みかんは量・質ともに順調な滑りだしを見せて店頭にならびましたが、つづく早生みかんは11月の半ばを過ぎても姿をみせません。

  スーパーや果物専門店はもちろん下級品を扱う直販所でさえほとんど見かけないのです。たまにあっても、選果で除外されたような品が高い値段で売っています。

  やむをえず贈答用に送っている銘柄産地の早生みかんを少しだけ食べてみると、いやに味が薄くて水っぽいのです。通常、ボケみかんと呼ばれるもので、とても他人様に送れるものではありませんでした。

  愛媛のみかんは早生みかんが主力です。毎年、11月上旬には東京太田市場で初セリが行われます。

  そのときに10キロ入りの桐箱がセリに出されて一昨年はひと箱150万円のご祝儀値がつきました。それが今シーズンは色づきも味も今一つなので用意できなかったといいます。

  それに樹に着く果実が少ない、いわゆる裏年にあたるうえ、秋の天候が悪くて実の太りが悪いうえに味も乗らず、販売できる量が少なかったようです。

  やはり農産物の出来不出来はどうしてもお天道様しだいのところがあります。

  それにしても真穴、川上、日の丸といったみかんの銘柄産地の味が落ちたと思ったのは一昨年から二年続きです。ひょっとして、みかん農家が高齢化しているように産地を支えてきたみかんの樹も老木化して、かつての味が出せなくなっているのでしょうか。

  みかんの樹は植えてから二十年くらいで収量が最高になり、三十年になると味が最高になって、四十年を過ぎると収量、品質ともに落ちてきます。

  樹が元気なうちは一本の樹に6百個ほどの果実を着け、その糖度は12度を超えることもあります。一般に糖度10度を超えるみかんは甘いみかんになります。

  そうしたみかんの樹は、根の部分が地表から20a以内の浅いところに広がっています。ただ、日当たりが悪くなると根は土中深く入り込み、果実は腰高となって皮が厚く、酸味の強い果実になってしまいます。

  根は地表の影響をうけて地下での広がり方が変わり、その結果、果実の味も変わります。ですから老木になると根が弱って天候の影響を受けやすくなり、ボケみかんになりやすいといわれています。

  いまの温州みかんの産地は、昭和47年におこったみかんの価格暴落を機に普通温州から早生温州に切り替えた産地です。
普通温州とは12月から年明け1月まで出荷されるみかんの種類で、早生温州は11月から12月にかけて出荷されるみかんの種類です。

  当時からすると50年は経っているので、途中で植え替えをしていなければ結構な老木になっています。もちろん熱心な産地であれば計画的に新たな樹に植え替えているでしょうが、少し心配です。

  これに対して中晩柑類には良い品種が次々生まれているので、『伊予柑』からの改植や新植が進んでいます。中晩柑とは年明けから6月までに出荷される柑橘類の総称です。いわば温州みかん以外の柑橘類のこと。

  たとえば年末から年明けに出回る『紅まどんな』や『はれひめ』や、2月から3月にでてくる『甘平』や『デコポン』、『せとか』に、4月から5月の『清見』などがあって、これらは高値で取引されています。

  しかも栽培上、温州みかんよりも適地が広いという利点もあって現在8万dが生産されています。これらは植えてからまだ10年くらいしかたっていないので、これから収量・味とも高まってくるでしょう。

  全国の生産量の2割近くをしめている温州みかん(11万d)を超すのも時間の問題です。

  しかしながら、温州みかんは安いし手軽に食べられることから、庶民の味方といえる果物です。なんとしても、みかんの産地には新たな樹を育ててがんばってもらいたいものです。

  それに来シーズンになって早生みかんが本来の味に戻っていればこうした懸念は杞憂となるので、是非そうなることを期待しています。