蚕を飼ってみよう
蚕を飼うことはさほど難しくありません。昔から「蚕は風で飼え」と言われるように、ひんやりとした微風がとおる部屋があれば十分です。気温でいえば25〜28℃くらいでしょう。それに蚕が食べる桑を切らさず与えられること。それさえ出来れば蚕を飼うのは簡単です。ただ、殺虫剤や殺菌剤に極めて弱いので、決して近くでは使わないことです。
蚕を初めて飼う場合には少し大きくなった蚕から始めるのがいいでしょう。そのときは(株)愛媛蚕種に連絡しておけば、3令や4令に育った蚕を送ってくれます。
愛媛県八幡浜市保内町川之石にある愛媛蚕種株式会社
蚕を飼うには飼育容器が必要です。100頭ほどを飼うのであれば、菓子箱やプラスチックケースで飼い始め、大きくなれば容器の数を増やして分けていくといいでしょう。
蚕は桑の葉しか食べないので、近くに桑の木が植わっていなければ人工飼料で飼いましょう。桑の葉で飼いはじめて途中から人工飼料にかえることは出来ません。人工飼料で飼っていて途中から桑にかえることは可能です。人工飼料は日本農産工業の「シルクメイト」や群馬県の稚蚕人工飼料育センタ―の「桑の花」があり、(株)愛媛蚕種でも買うことができます。
次に、桑で育てる場合と人工飼料で育てる場合の要領を記しておきます。
上は 人工飼料のシルクメイト 下は人工飼料のくわのはな
ー桑育の場合ー
飼育を始める時期が決まれば、必要な蚕の数と飼育を始める日を(株)愛媛蚕種へ伝えます。会社では当日に孵化した蚕が届くよう手配してくれます。
卵から孵化したばかりの蚕の幼虫。輸送用の容器にいる20,000頭の幼虫
蚕種会社から予定した日に蚕の入った容器が届きます。中をあけると蟻のような蚕がいます。桑の葉を包丁で1a幅に刻んだものを蚕の上からふりかけます。しばらくすると蚕は桑の葉に移動して食べ始めるので、頃合いをみて葉っぱごと蚕を飼育容器に移しかえます。飼育容器の蓋は桑の葉が乾燥しない程度に少し隙間をあけておきます。
それからは日に三度くらい柔らかい桑の葉を刻んで与えます。蚕は3日のあいだ休みなく桑を食べ続け、その後一日動かなくなります。これが眠です。眠のときは桑の葉を与えず飼育容器の蓋はずらしておきます。翌朝には脱皮して2令になっているので新しい桑の葉を与えます。蚕が葉に移動すれば容器の底にたまった古い桑や糞を取り除きます。
1〜2令のあいだは若い葉を切って与えますが、3令からは普通の桑の葉を与えます。2令と3令はそれぞれ3日間、4令は4日間、5令は7〜8日にわたって桑を食べ続けます。それぞれの令と令の間には一日の眠の日があり、その日は飼育容器の蓋をずらして乾燥気味にしておきます。
桑の葉を食べる5令の幼虫
100頭の蚕が食べる桑の葉はトータル2キロほどですが、食べ残したり乾燥したりするので2倍の桑の量が必要です。
ー人工飼料育の場合ー
人工飼料は直接さわらずビニールの手袋をして取り扱います。蚕種会社から蚕が届くとシャーレなど消毒のできる容器を用意します。人工飼料を厚さ1aの輪切りにしてシャーレに置いて、蟻蚕を羽箒で掃きおとします。シャーレは蓋をして28℃くらいの場所におきます。その後は飼料の減り具合をみて新たな人工飼料を切って与えます。眠に入つたときはシャーレの蓋をすこしずらして餌を乾燥させます。
2令になると人工飼料は短冊状に切って箸で置き、蚕が新しい飼料に移動したら古い飼料を取り除きます。2令の間は一日おきに飼料を与えます。蓋の内側に水滴がつくようなら蓋を少しずらして隙間をあけるようにしましょう。3令以降はほぼ毎日、飼料を与えますが、飼料の減り具合をみて調整します。 だんだんと体が大きくなると過密になるので容器を増やして分けて飼いましょう。
人工飼料を食べる5令の幼虫
人工飼料には、トウモロコシの粉末や脱脂大豆粉末、無機塩類、ビタミンB混合やビタミンCなどのほか桑葉の粉末が入っています。防腐剤は入っていますが、カビや雑菌の繁殖をふせぐために消毒用のエチルアルコールで包丁や箸、容器などは消毒してください。4令以降は毎日、新しい飼料を与えます。