折々の記 4

 


 海辺に黒い鳥がいる。鵜のようだ。ウミガラスの異名があるように色は黒い。潮が満ちるともぐって魚をとっている。 勢いよく海中にもぐって10秒ほどすると浮いてくる。その間に20mは進んでいる。
   ほとんどは、一羽で漁をしているが、二羽で挟みこむように漁をするときもある。一度の漁で20回ほど潜っているが獲れることはほとんどない。 所詮、海の中では魚の方に利があるようだ。
   運よく捕まえることができた魚は海面に浮上して飲み込んでいる。どうやらボラの群れを追っているようだ。
  海にもぐるため、羽根の手入れは欠かせない。漁が終わるとテトラポットで羽根を広げて乾かしている。

  大洲市の肱川で行われている鵜飼の鵜は、海鵜を飼いならしたものらしい。 昭和の半ばに観光を目的に始められた。
  鵜は 20羽ほど飼われているが、一度の鵜飼に使われるのは 5羽という。紐でくくられせっかく獲ったアユも吐き出さねばならず、鵜もやる気を無くしてしまうのだろう。だから交代でショーにでている。それに本来なら寝ているはずの夜のお仕事である。ただ、飼われているだけに日々の食事に困ることはない。

   海岸の鵜は一見、気ままな生活を送っているようだが、一日の多くをエサ取りについやしている。漁の腕をあげることは生きることにつながっている。
   漁を終えた鵜が沖合を見ながらたたずむ姿は、岸壁にたたずむ漁師に似て、一仕事終えた感が漂っている。