折々の記 68

イタチの引っ越し


  イタチという動物をこれまで真近で見たことはなかったのですが、先日、庭で樹の剪定をしていたら6匹ほどのイタチが群れになって通って行きました。塊になって地面を這うように進んできたので、初めは何がいるのかわかりませんでした。庭の前には道路があって車がよく通ります。彼らは音でわかるのか躊躇なく、しかも整然と渡っていきました。

   突然の出来事に驚いていると、さらにイタチの子供が2匹、あとからやってきて、群れを捜して庭のなかを回り始めたのです。私の足元を通りながら驚いたようにこちらを見上げたりします。この迷子、どうしたものかと思っていると母親は子供がいないことに気がついたのでしょう。道路の向こうまできて心配そうにこちらを眺めています。それを見た子イタチたちは安心したようにトコトコと道路を渡っていきました。

   それからしばらくしてのこと。梅雨のおわりの大雨が降り、このあたりにも避難警報が出されました。イタチがねぐらにしていたと思われる線路わきの草むらもすっかり水の中に沈んでいます。群れが移動したのはその数日前のこと。おそらく何かの異変を感じて一家をあげて引っ越したのでしょう。

   野生の生物はこうした予知、予感のような動きをみせることがあります。たとえばカマキリの産卵です。秋になるとカマキリが樹などへ卵を産みつけますが、その位置をみれば冬の雪の深さがわかります。例年より高い場所に産んでいれば雪は多くなり、低い場所なら雪は少ないのです。カマキリが卵を産むころは雪の降り具合などわかりません。だからなんとも不思議なのです。

   人間にも第六感というか予感があるらしく、これが働く人がたまにいます。 妻などもそうしたたぐいの一人です。若いころから夢などは極彩色でみるうえ、匂いや触った感覚もあるといいます。しかも亡くなった人と話ができるようなのです。  

   人間にもまだ解明されていない能力があるのかもしれないし、そもそも予知の能力があるのかどうかもわかりません。ただ、生物学的なメスには、何か秘めたる能力があるような気がするのです。