折々の記 66

梅実黄・夏越の祓


   今年は梅雨入りが早く曇りや雨の日が多かったので、夏の水不足はなさそうです。6月16日は七十二候の梅実黄(うめのみきばむ)です。散歩の途中にある梅の実が雨にぬれて色づきはじめました。

   この地域には 『はなへんろ(花遍路)』という名の和菓子があり、蜜漬けした小梅を白餡と求肥(ぎゅうひ)で包んでいます。見た目では 『ねりきり』 のようですが、初めての人は中にある梅の種を思わず噛んでしまいます。気をつけて食べる必要のある和菓子ですが、味がいいと好評なので東京への土産によく使いました。店は大正時代から続く老舗でしたがコロナの余波をうけて閉じてしまいました。

   梅の実の収穫が終わるころには節気は芒種(ぼうしゅ)から夏至(げし)に変わります。夏至は6月下旬から7月上旬まで。そのうち6月30日はちょぅど一年の真ん中になり夏越の祓(なごしのはらえ)にあたります。 
  最近ではあまり聞かれない行事ですが、半年分の罪や穢れを祓って無病息災を祈るもの。京都人にとっては暮らしのなかにある季節の行事です。

   夏越の祓いは宮中儀式として飛鳥時代に始まっています。江戸時代になると神社で行われるようになって一般に広まりました。神社の境内には茅(ち)の輪とよばれる茅(ちがや)でつくった大きな輪が据えられて、それを三度くぐります。『茅の輪くぐり』です。最初は左まわり、次は右まわり、最後に左まわりで、左足から通ります。
 
  茅(ちがや)は草原に群生するススキに似たイネ科の植物です。ちょうどいま時分にススキの穂のような花をつけて空地などで生えています。茎は油分をふくむので水をはじきます。かつては屋根を葺(ふ)く材料に使われたので茅葺(かやぶき)屋根ともいわれます。
   夏越(なご)えの祓いがおわると京都では夏を迎えて祇園祭がはじまります。


                    茅の輪