蚕と絹のあれこれ 28

 メジロの鶯色               


  庭でチッチッチッ…と鋭く鳴く声がします。窓を開けると鶯色(うぐいすいろ)をした小鳥が三羽遊んでいるのが見えます。よく見ると目の周りが白いふちどりのあるメジロです。先日は近くの蝋梅(ろうばい)の枝でみかけたので、庭のツゲの木にみかんを置いてみたら目ざとく見つけてやってきました。
   この時期はサザンカやツバキの赤い花が咲き、蝋梅も甘い香りとともに黄色い花を咲かせるのでメジロたちが蜜を求めて飛びまわります。 二月になれば梅の花、三月には河津桜が咲き始めるのでメジロたちは忙しくなるでしょう。
   
        庭に遊びにきたメジロ             メジロが好きな蝋梅
   メジロの羽色は鶯色ですが、鶯色のもとになったウグイスは何色をしているのでしょう。 ホーホケキョという鳴き声はよく耳にしますが、姿を見かけることはまずありません。鳥類の図鑑によると羽根は緑がかった茶褐色とあります。意外なことに地味なのです。念のため鶯色をしらべてみると驚いたことに緑がかった茶褐色となっています。ウグイスの羽色と同じです。 ほかに鶯茶(うぐいすちゃ)という色もあり、こちらは茶色味をおびた深い緑色でありウグイスの羽色に近いとされています。
  これまで鶯色やウグイスは鶯餅のような緑黄色か抹茶に近い色だと思っていましたが、それは全くの思い違いでした。



        鶯色            くすみのある緑黄色           鶯茶
 鶯色や鶯茶は、楊梅(やまもも)で染めたうえに蓼藍(たであい)で重ね染めをしていて、メジロの緑黄色は蓼藍の生葉染にキハダ(黄檗)を重ね染めして色をだします。緑色に直接染める染料がないため、黄色と青を重ね染めして緑色にしているのです。
   この間違いは花札のせいかもしれません。『梅にウグイス…』 とある札は赤い梅の花にとまる緑黄色の小鳥が描かれています。ウグイスが鶯餅のような色で描かれているのです。
   でもウグイスは美しい声で鳴くものの臆病なので山の中にいて姿をみせません。人家の梅にとまったりはしないのです。一方、メジロは人を恐れず庭の梅の木にやって来てかわいい姿を見せてくれます。花札では梅の木にとまるメジロを描きながらホーホケキョと鳴かせていたのです。つまりメジロをホトトギスのように思わせた花札に問題があったわけです。
   おかげで本当のウグイスや鶯色が分かりましたが、それでも鶯色はウグイス餅やウグイス豆のように緑黄色である方が春らしくて似合うように思うのです。 皆さんはいかがでしょうか。