折々の記 19

タンゴール


  みかんとオレンジをかけ合わせた果実をタンゴール(tangor)とよんでいます。
  みかんを英語でいうとtangerin(タンジェリン)。そのtangのtanとオレンジ(orange)orをつけてタンゴールtangorとよんでいます。外国の人は、名前のつけ方も合理的です。  
  ちなみに、タンジェリンは皮がむきやすいみかん類の総称で、皮に少し赤みがあります。同じみかんでも中国からヨーロッパやアメリカに伝わったものはタンジェリンとよばれ、中国から日本に伝わったものがマンダリン(温州みかんの仲間)といわれています。

   タンゴールはみかんの甘さとオレンジの風味があって、近年人気が上昇しています。日本人の嗜好性と合っているので、これからの柑橘の主流になるでしょう。
  難点とされる皮のむきにくい点は、オレンジのようにカットして食べればよいので、かえって若い人たちには抵抗がないかもしれません。

  タンゴールのなかでも秀逸とされるものに清見タンゴール(以下清見)があります。 柑橘類の端境期(はざかいき)といわれる4月から5月にかけて旬を迎え、みかんの甘さとオレンジの風味がミックスした、まさに若い人好みの味です。
  紅マドンナやデコポンといった高級柑橘の生みの親でもあり、タンゴール時代をけん引する品種です。


     清見タンゴール 〔宮川早生(みかん)とトロビタオレンジの子  熟期は4月〕

  清見タンゴールを親にもつ紅まどんなは、オレンジの風味とみかんの甘さに加えてゼリーのような食感が特徴です。
  育成当初は、柑橘の常識からかけ離れた果肉の柔らかさにクズみかんと言われさんざんな評価でした。今では年末の贈答品として面目を一新しています。


紅まどんな 〔清見と興津早生(みかん)の子とページを掛け合わせ、更に南香と交配したもの 熟期は12月〕  

  清見タンゴールを親にもつデコポンはとにかく甘いのが特徴です。
果実は首の部分が飛び出しているので、当初は規格外品に扱われました。でも一度食べるとやみつきになり、その姿はデコポンを見つけるための大事な目印になっています。


デコポン 〔清見と中野ポンカンの子 品種名は不知火(しらぬい) 糖度13度以上で酸1%以下のものがデコポン〕

  かつてオレンジの自由化のときにみかんの産地は大騒ぎになりました。いま思うと、オレンジやネーブルの生果の輸入は心配するほどのことではありませんでした。
  すると『皮がむけない柑橘は日本では売れない』という話がもっともらしく語られます。でも日本でできたオレンジタイプのタンゴールは皮がむきにくくても高級柑橘として高い評価をえています。
  アメリカのオレンジやネーブルが日本人の好みに合わなかったのは味や風味といった点に繊細さが足りなかったからだと思います。日本人は柑橘に甘さだけでなく、香りや舌触り、酸とのバランスなどを求めています。
  だから、みかんの甘さとオレンジの風味や爽やかさを持ったタンゴールが人気を集めているのです。いずれ柑橘といえばタンゴールと言われるような日も遠くないでしょう。